富士1000Km耐久、このタイトルを見てハッと思った方は、かなりのレース通。
その昔、ハコ車と純レーシングカーが混走で1000Kmを走る耐久レースがここ富士スピードウェイで
開催されていたのだ、日本のレースでもかなり有名で見所満載のレースであった。
しかし、オイルショックのあおりを受けイベント自体姿を消して、久しくなる。
ところが2002年マッドハウス主催で、時風に合わせ「エコラン耐久」という形で復活をとげる事になる。
立ち上げて間もないSCUDERIA E-S-Dはこの情報をいち早くGet!そしてそれに合わせるべく
2001年秋からマシン制作と体制作りに取り組んできた。もちろんエントリー車両は我らがネイキッド。
一見ドン臭さそうに見える風体ながら、その潜在能力はメーカーも気が付かなかった程
マシン作成コンセプトも何度と無く、見直されトライ&エラーの末に一つの形にまとまっていった。
それが「D-750 Mostra」「D」はダイハツのD「750」はネイキッドの車台番号「Mostra」は
僕の尊敬し、目標とするイタリアのカロッツェリア今は無き「アバルト」が生み出した
コンパクトお化け車の名前である。最終的な詳しいスペックは後記することにして、レースまでの
道のりと当日のお話をしよう。今回僕の立場はドライバーでも無ければメカニックでも無い
いわゆるレーシングディレクターである。マシン制作に必要な予算の組み立てや、スポンサー巡り
そしてスタッフ選出から、ホスピタリティー等思った以上に仕事量が多かった。
その合間を縫ってドライバーのエコナ鈴木君と、パルスポーツ主催の走行会に参加したときの事である。
苦難のマシン制作
タイヤもまだラジアルで主に足回りとサブコンのセッティングを目的にしていたのだが、思わぬ自体が、、
少しずつ車に慣れ、タイムを順調に縮めていた時、帰ってくるはずのモストラが最終コーナーから
姿を現さない!心配していると白煙をあげてトロトロと姿を現した!ストレート入り口までなんとかたどり着き
窓を開けてエコナ鈴木氏が叫ぶ「オーバーヒート!」今までの傾向からいくとその兆候は無かったので
「あれっ?」っとは思ったのだが、姿が見えて一安心。走行時間が終了し、パルスポーツの大坊社長
3人でモストラをピットまで押す。ボンネットを開けて大坊社長は一言「あ〜ガスケット抜けたかもね?」
まさか、まさかである。以前雑誌オプションにて同形式のエンジンのテストがあってその時ガスケットが
抜けたブースト圧が1.4確かに多少オーバーシュート気味だったとはいえ、まさかこの時点で
ガスケット抜けとは、、、。痛々しく真っ赤なLLCが血液のごとくピットを濡らす。
とにかく自走して帰る事は不可能な状態で急遽大坊社長にお願いして
パルスポーツでのエンジンオーバーホールをお願いする事になった。その間モストラとは東京〜盛岡間の
長距離恋愛である。復活を託した大坊社長とは電話でのやりとり、、、。目標の耐久レースに向けて
この際出来るだけの事はやろう!という事に、まず心配なのは水温&油温のクーリング系
たまたまパルスポーツプロデュースのスポーツラジエターが有るとの事。そしてオイルクーラー
エンジンを降ろすのだから、クラッチも強化タイプにそしてLSDも組み込む事にした。
製品的にネイキッドに適応した物が無く。他車用を流用する事になる。ましてやあまりレースでは
使われていないEF-DET3気筒エンジン。後で伺うとチューニングに際して相当な苦労があったとの事。
本当に大坊社長には感謝である。ある日、社長から「出来たよ!」との朗報。やっと愛しいモストラに
逢えるんだ!希望に満ちて新幹線に乗り込んだ。久しぶりに見たモストラはパルスポーツにより綺麗に
磨かれ、存在感が増したように感じた。細かなセッティングメニューと注意事項を伺い
こんどはモストラの馴らしを兼ねて東京までのロングツーリングである。
久しぶりにモストラのバケットシートに潜り込むイグニッションを捻ると、いとも簡単に
EF-DETは目覚めた。途中何度かサービスエリアにて休みながら、次の日の朝方には
東京にたどり着いていた。ここからが大慌て、予想していなかったトラブルにより計画がかなり遅れて
いたのでその帳尻をあわせるべく、スケジュールを調整する。結局本番までに出来たテストはFISCOでの
1回のみ。この時点ですでに相当の問題が発生し、後はぶっつけ本番になってしまった。
レース1週間前は本当に眠る間はなった。僕だけではなく、主要スタッフみんなであるが
気が付いたらレースの前日、FISCOのピットに居たという感じである。もちろん前日もクローズドの
時間まで整備作業は続く、、、。当日の朝僕たちはほとんど一睡もしないでモストラの待つ
ピットに向かった。ほかのチームも続々集まり序助に気分が盛り上がって来る。バタバタしながら
これまた気が付くとマシンはスターティンググリッドに、、、。スタートは変則ル・マン形式で
スタートチェッカーが振られると同時にストレート対面からチームメイトがマシンに駈け寄り
マシンにタッチ!そして車がスタートする仕組みである。我が「SCUDERIA E-S-D」のファーストドライバー
は、インテグラカップを戦う「番長なかむら氏」そしてマシンに駈け寄るスターターは
ご存じ現役GTドライバー「ターザン山田氏」である。完璧なキャスティングだが、どうなる事やら、、
そしていよいよ9時間半後のゴールにむけチェッカーは振られた。さすが番長なかむら。確実なスタート
1コーナーへと消えて行った。番長は確実にラップを重ねる。実に安定したタイムである。
そして予定のピットイン!ここでターザン山田との交代である。その後数周後、、、事件は起こった!
痛恨の大トラブル
ターザン山田から無線が、、「左フロントタイヤが取れた!」僕は一瞬耳を疑った。
詳しく事情を聞き、すぐさまメカニック達が救出に向かう!しばらくして帰って来たモストラの姿を見て
スタッフ一同言葉を無くした!左フロントのフェンダーが大きく歪みハブボルトが折れ
誰がみても「修復不可能」と思える程のダメージ、、、。静まりかえったピットでメカニックの
「やまちゃん」と「カズ」が(さあ、直すぞ!)と、その瞬間スタッフ気持ちが一つになった!
僕はすぐざま応援&スタッフで駆けつけてくれたDNOCメンバーにお願いをする。
「誰かハブを貸してくれないか?ドナーを提供してくれないか?」と、こんな無茶なお願いに
ひとりの仲間が手を挙げてくれた。Webではすっかりおなじみの「那須温泉」氏であった。
すぐさま彼の愛車をピットに移動、突然の移植劇が行われた。それと同時に醜くめくれあがった
フェンダーの板金作業も行われていた。ここでは番長の会社に勤める敏腕板金職人氏の手により
ネイキッドの複雑なラインが猛スピードで復活しようとしていた。後はお約束のガムテープ補修である
そしてなんとスタッフや野次馬が見守る中、1時間半のピット作業の後、再スタートを切る事が
出来たのである!誰もが奇跡だと思った復活。思わず周りから拍手があふれる。
こうなったら何がなんでも完走を目指すのみ!現場にこれなかった個人スポンサーのDNOCメンバーの為にも
各スポンサー様、すべての関係者みんなの願いである。ここからは「エコナ鈴木」氏のドライヴである。
彼の役割はいかに燃料を使わずに、エコラン出来るか!まさに名前の通りである。
そして誰よりも長い走行時間が科せられている。真夏のこの時期まさに命がけのスポーツだ!
途中何度か点検の為のピットインを繰り返しながらも順調に周回を重ねる。この時、他のチームには
無いもう一人の影役者が居た。気球とNA~TURBOでおなじみの西野さんである。
彼は気球で使う強烈な送風機を用いで、ピット作業中エンジンを冷却するという
前代未聞のスタッフなのである。その効果は絶大で、全開で走ったエンジンを切ると
凄い勢いで水温、油温が上昇して、エンジン各部を痛めてしまうのを確実に防いでくれた。
絶対リタイア出来ない。ピットウォールでは炎天下の中
DNOCメンバーがドライバーにサインボードを提示。これも休むことが許されない超過酷な役割なのだ。
その他にも、窓拭きや、ドライバーのドリンク交換など様々な作業が耐久レースには付き物である
ゆえに大勢で楽しめるのではあるが、、、。とにかく過酷だ。そして序助に日が暮れ、周回を重ねる
マシンのヘッドライトが灯りはじめ、ラスト30分。その時走っていた番長が突然のピットイン
またか!と思われたが、彼は転がる様に車から降りてきてこう言った「ガソリンがもたない」と、、、。
そこで僕は判断した、このまま周回を重ねるとガスケツで最後まで走りきる事が出来ないかも知れない
このままラスト10分まで、車を停めなんとしてもゴールラインを通過、、、完走をめざそうと!
その間ドライバーの居なくなったモストラのフロントガラスを丁寧に磨き上げるスタッフの
姿が妙に印象に残っている。そしてラスト10分。番長とターザンがエコナ鈴木にラストの
花を持たせた。実は彼このレースがデビューレースだったのである。暗闇のピットロードに
スーパートラップサイレンサーをおごった、マーシャンクレートスペシャルマフラーから
排気音が響きわたる。と同時にベロフHIDが闇を裂き、1コーナーへと消えてゆく。
後は神のみぞ知るの心境で、スタッフ一同息をのんで、終了時間を待つ。
レースの模様をずっと実況していた、アナウンサーが声を枯らしてカウントダウンを始めた。
そして19:00を迎えた。主催者のマッド杉山氏がゴールのチェッカーを振る。
終わった!緊張と興奮の9時間半その緊張から解きほぐされ僕は一瞬、倒れそうになる。
その時モーターホームまで提供してくれたスピードマスターの「沼田氏」が駈け寄ってきて
「おめでとう!」と。そうだ!これって「おめでとうじゃん」我に返ってストレートに並ぶ
戦い終わった各マシンのなかからモストラを見つけ駈け寄ったみんなで駈け寄った
このコース上にいる人たちすべてが同じ喜びを共有していたように思う。
こんな貴重な体験をさせてくれた、スタッフ、スポンサー、そしてDNOCメンバー、主催者
すべてに感謝である。そして来年富士スピードウェイ改修が行われる前にもう一度
この耐久レースが行われるのだが、絶対出よう!と決心させてくれた。
僕達にとって、耐久レースの始まりはここからなんだ、、、!みんなまた一緒に戦いましょう!
楽しみましょう!そして参加しましょう!最後にもう一度、応援してくださったみなさま
本当にありがとうございました!
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ムービーコーナー:
ストレート(MPG)2,5Mb
A-コーナー(MPG)2MB
奇跡のピットスタート(MPG)2.4Mb

D-750 Mostra最終スペック&クローズアップ
(もうしばらくお待ちください。)